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「バル業態が身近になった。その魅力とは」

バル。何それ?と、言われた頃から早10年になる。イタリアンのバルならわかる時代に突然スペインバルが人気になり始めたのが2005,6年頃。その頃は、スペイン人の生活に根付いた現地そのままの日常的なスタイルのものだった。今のようなノンジャンルスタイルのバルが東京で盛んになってきたのが2008,9年頃だろう。料理が無国籍化し、スペインにとらわれない内外装、ワインやカクテルなども多種多様なものへと変化してきた。そして今や日本酒バル、海鮮バル、和バル、肉バル、オーガニックバル、地中海バル、ご当地バル等など、あらゆるバルが出現してきた。私自身もバル業態の店舗を経営し、飲食店のプロデュースの事業も行っているが、おそらく、近い将来には本当に愛されるバルだけに淘汰されることになるだろう。

しかし、バルという業態は決して一過性のものではないと思っている。バルという名前が先入観としてオシャレで新しい業態と思われがちだが、私の考える業態の定説としては、日本に昔から根付いている業態となんら変わるものではない。その代表的なものとしては、焼鳥屋、やきとん屋、おでん屋、煮込み屋なども立派な日本文化から生まれたバルと言っても良いであろう。おそらくこれらの業態が出てきた頃には、気軽に飲める日常的な新しいスタイルの業態だったのではないかと想像する。

要するにバルというのは、家賃の安い小さな店舗で、店とお客さんの距離が近く、焼き立て、出来立てをカウンター越しにすぐ食べられる立ち飲みスタイルということだ。そこにはチェーン店のような安さや気軽さだけでなく、毎日でも通いたいと思える心を解放してくれるような家庭的ともいえる人の温かみがあるのが理想ではないだろうか。

さて、ここで現在のバル業態の特徴をいくつかあげてみよう。立地は駅から徒歩1、2分から7、8分までが大半だ。駅に近いほど路地奥になり、離れれば徐々に表通りに近くなる。いわゆる2等立地、3等立地で家賃は首都圏相場で坪2万円までが経営的に理想といえる。店舗は5坪から15坪程度の立ち飲みスタイルが主流だが、最近ではそれも少なくなってきた。本来のバルは小規模店舗であるために、回転率を上げることで売り上げを確保してきた。その結果が立ち飲みスタイルになったのだ。

しかし、バルの出店が過激になり30坪、40坪以上の店舗も増え、女性にも人気となったことから、着席スタイルに変化し、居心地感も求められるようになってきた。そのようなバルは店とお客さんの距離が遠くなり、本来のバルの良さが失われることになってしまう。料理では小皿料理のタパス、低価格でクオリティの高い手作りの料理、手書きの黒板メニュー、スタッフはTシャツスタイルで温かい接客(マニュアル的でない)、多少のわがままも聞いてくれるような個別対応も可能だったりする。

いろいろと書いてきたが、飲食店経営である以上、看板メニューや店の特徴と差別化、そして健全な経営を行う仕組みはもちろん必要ではある。しかし、長きに渡り多くの人々に愛されていくためには、やはり地域密着が基本でなければならないと思う。美味しい料理と温かい笑顔でゆるくつながる“私の居心地の良い場所”になることを忘れてはならないのではないだろうか。


FBCJ理事 水谷建治
株式会社テイスティーズ

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